ある友人から聞いた話。

その友人は釣り好きで、その日も早朝から川へ釣りに出かけていた。
早朝の川岸というのは同好の志が何人かいるくらいだったり、まぁせいぜい散歩する人がいるくらいなのが常である。

しかし、その日は違った。
いつものポイントに入って釣りをしようとする彼の視線をクギヅケにしたのは、ある男性だった。

その男性は、年のころなら20代前半くらいだろうか。ちょっと洒落たかんじの身なりである。
それだけだとさして問題はないのだが、その異様な様というのが凄い。

川岸に三脚を立て、その上にはビデオカメラらしきものが載っている。彼はその前でしきりにポージングしながらタバコをふかし続けているのである。早朝の川原で謎な行動をとる男性。どう考えても異常だ。
じとーっとその様子を眺めるわけにもいかない友人は(あれはもしかして自殺志願者がダイイングメッセージを撮影してるんじゃなかろうか)と気が気ではない。靴でも脱げば即座に走り出す覚悟で、横目でこっそり観察を続けたそうだ。

だがその男性はただただタバコを5〜6本ふかし続けて、そのたびに髪型を調整し(鏡まで用意してたらしい!)ビデオの前でいろいろとポージングしていたそうである。

やがて日が高くなってからその男性、暑くなったのか飽きたのかそこから去って行ったらしい。
まったくもって理解に苦しむ行動であるが、セルフイメージビデオなるものでも撮影してたのかどうなのか…。今もってそれは謎に包まれているのである。まぁ自殺志願者じゃなくてよかったね。


著:戦車




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