ハードボイルド小説ってやつが好きで、ちょいちょい買っては読んでいる。
まぁいわゆるハードボイルドマニアで詳しく歴史背景がどうとかってほどではないし、読書をがんがんする方でもないのでちょいファンってくらいなのだが、結構好きなほうだ。

先日、そのハードボイルド小説の中でもかなりの有名どころであるアメリカの作家レイモンド・チャンドラーの著書である「ロング・グッドバイ」がかの村上春樹の訳で再登場した。
この作品、以前に「長いお別れ」という邦題で出版されていたのだが、村上春樹の文体で訳された新しい名作として再びの出版となった。

「ギムレットには早すぎる」という台詞、ハードボイルドファンじゃなくても一度くらいは耳にした事がある方も多いはず。その台詞が登場するのが本作品だ。
主人公はフィリップ・マーロウ。40過ぎの独り者でタフな私立探偵だ。アメリカンなコンバーチブルを乗りこなし、ぼろっちい事務所で滅多に現れない依頼者を待つ間、チェスの詰めで時間をうっちゃる。かなりの皮肉屋で、悪漢に銃を突きつけられても憎まれ口を叩くほどの胆力がある。まさに今日の私立探偵のお手本になったキャラクターなのだ。

そんなマーロウが偶然出会った男、テリー・レノックス。富豪の娘と結婚して裕福な身分でありながらどこか自暴自棄、そしていい加減な酔っ払いに見えながらも礼儀正しく、繊細な神経を併せ持つテリー。何度か杯を重ねるうち、どこかしら友情を感じていく両者だが、ある時そのテリーの妻であるシルヴィアが何者かに殺害される。妻殺しの容疑をかけられたテリーをマーロウは、彼の犯行ではないという確信と友情で彼のメキシコ逃亡を幇助する。
しかし、その逃亡先のホテルでテリーは自殺してしまう。だがそれは物事の一面であり、その真相はまた違った様相を見せる。次第に明らかになっていくシルヴィア殺しとその背景。ついにマーロウは真実にたどり着くが、そこにはまたほろ苦い結末が待っているのであった…。

というのがざっとしたあらすじである。
が、この小説の素晴らしいところはなんと言っても名台詞。そして粋な表現とセンチメンタルなストーリー。
どこを切り取っても俺的ハードボイルドの傑作である。この文章書くのにちょっと箇所を取り上げようと思ってチェックしてたらまたふつーに読み直しそうになってしまった。

以前の「長いお別れ」もなかなかに素晴らしいのだが、粋という部分、読みやすさという部分に関してさらに良くなっているように思う。海外作品の翻訳物ってのはどうも読み疲れするものが多いのだが、これは非常にこなれてる、という印象だ。
しかしアチラのハードボイルド小説の主人公ってよく酒飲んでるよねぇ。あんなに飲んでていいのかなぁ。


ロング・グッドバイ レイモンド・チャンドラー 著 / 村上春樹 訳  早川書房 定価(本体1905円+税)


著:戦車




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