ワシは仕事柄、よそさまのクルマの中を見ることが多い。
クルマってヤツは人柄をよくあらわすもので、意外な事に驚かされることもあるもんだ。

例えば、人品骨柄卑しからざる人物っぽい人のトランクルームからエロ本が発見されたり、すごい美人なおねーさんのクルマがびっくりするくらい汚れてたりね。
ここらへん、部屋を見ると人物が分かるとか、本棚を見ると人物が分かるみたいな話とつながるんじゃないかと思う。


んで、ある日のこと。
あるお客さんのクルマを掃除してたわけさ。
そしたらシートの下から乾燥したレモンだと思われる物体が出てきた。

よくあるケースで、芳香剤の代わりに香りのいい果物なんかを車内に置いてる人もいるんで、それがほっとかれて乾燥しちゃったのかな、なんて思ったんだ。 まぁむしろウェットな汚れ物に比べればかわいいもんでね。

で(もぉしょーがねぇなぁ…)なんて思いつつ、がしりと素手でそいつをつかんで捨てようとした。
しかしどうも乾燥レモンとは手ごたえが違うような気がする。なんか表面に切れ込みがある部分があるし、妙な油っぽさとパリパリ感があるんだ。

そいつを手にとってまじまじと見れば、乾燥したいなり寿司だよ。そいつが乾燥して小さくなってくるりと内側に巻き込まれてるんですっかりレモンに擬態だったんだ。
ワシはふと「それは私のおいなりさんだ!」ってネタ(週刊少年ジャンプに連載されてた「変態仮面」のシーン)を思い出して愕然となったのだった…。

ダメだよ、車内においなりさんは。


著:戦車




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