学生の頃、一人暮らしをしていた。
友人が結構な確率で部屋に遊びに来ていて、そのまま泊まっていくなんてこともよくあった。

その日もそうだった。
てきとーだけど量だけはある料理で腹を満たし、いい加減なアルコールで酔っ払い、あれやこれやと馬鹿話を展開していくうちに、いつしか一人また一人と眠りに落ちていく。

そんな丑三つ時(だっけか?)。
その日は俺を含んで4人という構成で雑魚寝をしていた。既に撃沈したのは一人。
荒唐無稽なSF世界の話だの森羅万象だの誰かの悪口だのいろいろ展開していくうちに眠気が皆を覆っていく。次第に声も低く小さくなる頃だ。

既に眠っているはずだった友人の様子がおかしい。「う〜んう〜ん」と寝苦しそうな声を出している。
「誰かちょっとヤツの様子を見てみなよ」
起きているうちの一人がしょうがねぇな…という感じで様子を見に行く。

と、その時であった。

様子を見に行った彼が声を押し殺した感じで激しく笑っているではないか。
「どうした!?大丈夫??」
と聞く我々に彼はこう言った。

「コイツ今寝言で『はぁはぁ…オレのスピードについてこれるかっ…』って言った!!!」

あまりの面白さに転げまわる我々。
無理やり寝言君を起こしてどんな夢を見ていたのかと聞いたのは言うまでもないが、何も覚えていなかったのは至極残念であった。

謎は謎のまま、現在に至るのである。よっぽど早かったんだな、O君。


著:戦車




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