前回のあらすじ

瀬戸大橋を渡ってたどり着いたうどんの聖地香川。
世のうどん通を魅了するマニアックな製麺所から旅行者も安心の一般店まで幅広い層を持つその香川県に挑んだ我々。
だが、最初の目的地であった綾川町「田村」は既に数多くの客が行列をなす地獄と化していた。
時間的制約に泣きつつ田村を断念するが、偶然飛び込んだ同町内のうどん屋「丸善」のアットホームながらもレベルの高いうどんに驚きを禁じえなかったのであった。



さて、一軒目でうまいうどんにめぐり合えた事に神の采配を感じた(おおげさ)我々は次の店を目指す。

次なるターゲットは同町内にある「道の駅綾南」その中の「うどん会館滝宮」をである。
多くの観光客が行きかう道の駅の中にあるレストラン風うどん屋だと、聖典「おそるべきさぬきうどん」に記載されてる。

その店は確かにレストラン風だった。表のショーウィンドウにはサンプルまで飾られている。
ここはなんとなく求めている方向と違うな、と見れば「満員です」との張り紙。あっさりあきらめる。


次への移動の道中、田村の行列を再びチェックするが、相変わらずの盛況ぶりで今から行列に並ぶのはあまりにも厳しい。
その行列を横目で眺めつつ、同町内にある「山越」を目指す。(ここらへん、市町村合併で地名が変わってたりして古いガイドブックでうろうろするのは厄介だ)


旧綾上町にある「山越」。ここも超がつくほどの有名店だ。
あつあつ釜揚げうどんに生卵を投入して食べる「かまたま」はこの店が発祥だと言われているらしく、かまたまファンは一度は行かなければならない。

しかし。
何回かうどんの旅に来ている俺でも、この店ののれんをくぐったことがないのだ。ここも田村と同様、行列が酷い。(駐車場が広くなってて路上駐車は改善)
以前などは神戸プレートのフェラーリがいたりして粋なんだかどうなんだかわけがわかんない!という光景も見られたものである。

店の付近に来てみれば、案の定の行列であの最後尾に並んでも閉店時間である13時30分に間に合うかどうか、厳しいところだ。
ここもやはり英断をもってさっぱりとあきらめる。


そこで、この店のごく近くに以前来た事のある店があることを思い出した。
「安藤うどん」という店なのだが、いわゆる一般店である。しかし一般店とはいえ、安い。
めずらしいところでうどん焼き(店内の写真から見るに焼きうどんだと思われる)とか、打ち込みうどん(煮込み)があるのだ。

安藤うどんに到着し、駐車場を見るとここもやはり香川プレートの車ばかり。地元の人が多いところは信頼できる。

店内に入ると、席には家族連れもいれば一人客もいてまずまずの賑わい。
早速注文したのは冷やしぶっかけ小。うどんが出てくるまでの間、テーブルの上に置かれたおろしがねとショウガを眺めて過ごす。
ご当地では、ショウガはこういう形で置かれているのだ。



…香川のマニアックなうどん屋というのは、ほとんど13時から14時あたりで店を閉める。
それは近所の人たちを相手にした商売をしているからだと思われるのだが、うどん目当ての旅行者にはその閉店時間がルートプランを立てる上で厄介な問題になってくる。
目的の店と開店・閉店時間。それにプラスして考えないといけないのが副食物である。てんぷらが人気の店などで、閉店間際に飛び込んでもうどんしかないなんていう悲しい事態に陥ることだって十分にあるのだ。
勝負は14時につく。そのことを知らずにうどん巡礼を行うと必ず悲しいことになるのだ。ゆめゆめ忘れるべからず。



そうこうしているうちに注文の冷やしぶっかけ小が運ばれてきた。
中央に半熟たまごが配され、わかめ(乾燥じゃない!生のを加熱した分厚いヤツだ!)や葱等と共に出汁が投入されたぶっかけである。
おもむろに激しく攪拌。行儀が悪いかもしれないが、たまごが入っているのでこれでいいのではないかと自分的納得。

口に含むと期待を裏切らないしっかりした麺。出汁にもほどよく絡む。
しかし案外薄めの味付けの出汁で思ったほどインパクトがない。悪くは無いのだが、なんというかこう、醤油をかけてもいいですかー?的な味なのだ。
たまごがある分薄まってしまうのか、冷たいので味を感じにくいのか。そこらへんは定かではないのだがちょっと残念である。

そうは言ってもさすが香川のうどん。はずれではないところが素晴らしい。冷やしだから麺もしっかりで納得の味わい。しかもやはり安い。
満足感を持って店を出た我々は、再び新しいターゲットをサーチする。


だがそれが波乱の幕をあけることになろうとは、その時誰も予想していなかったのであった…。


香川うどんの旅 疾風編に続く



著:戦車




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