前回までのあらすじ

山陽道を抜けて南国土佐を目指すご老公一行。その前に突然現れた峠茶屋の娘お菊に八兵衛が一目ぼれ。しかしお菊は地元のヤクザ者に目をつけられていた。
自分の力でお菊を守るため、助さんに剣術を、格さんに体術を習いヤクザ者と対決する八兵衛。しかしお菊、実は男だった事が



…いや、ごめん。面白いかと思ってやってみたんだ。冷静になってみるとあまり面白くないな。うぅ。



気を取り直して前回までのあらすじ

坂出市から綾川町に入った我々は、当初目指した店の行列の凄さにあっさりあきらめ違う店を新規開拓。
地元民の集う良質な店にめぐり合え、うまいうどんを食べることが出来た我々は続いて別の有名店を目指すも、やはり行列を見て断念。手堅く以前来た店でうどんを食べる。
しかし無難な展開では冒険心がおさまらず、もう一軒新規開拓を目指すのだった。



綾川町の安藤うどんで2杯目のうどんをたいらげた我々は、新たな展開を求めてもう一軒行って見ようということになった。
前にも書いたが、小という注文でも一玉ある。つまり現段階で二玉食べているわけだ。
時間的余裕、距離的な問題、そして楽しんで食べることの出来る限界。それぞれが複雑に絡み合う要素や制約の中で行ける店をチョイスする。

行き先はまんのう町。試してみる店も決まった。
だがこの店が曲者だったのだ。

ガイドブックの地図を見つつ移動すると、比較的難なく見つけられたのはまぁよかったのだ。
しかしいい時間にもかかわらず神戸プレートの車が一台停まっているだけ。しかも店にはのれんも何も無い。不透過ガラスのサッシの向こう側でなにやら人影がちらりとしているのみだ。
一瞬にして悪い予感が走ったのだが、ここまで来て引き下がるわけには行かない。覚悟を決めてサッシのドアを開ける。間違ってよその家だったらごめんなさいと謝ろう。

ドアを開けるとそこは間違いなくうどん屋だった。しかしそこは、俺のもっとも苦手とするセルフ店だったのだ。
まず目に付いたのは、既にてんぷらなどのトッピング具材はほぼ終わっている事だった。そして店内に漂う倦怠感。

ここまでの状況から冷静に判断すれば、確実にハズレである。だが店に入った以上は何か注文して食べてから出て行かねばならない。
ジレンマを感じつつも小を注文。すばやくテボ(麺をゆでる時に使う小さくて深いザル)を使って軽く加熱。コックをひねってタンクに入った熱い出汁を丼に投入。適度にネギを散らして、トッピングはラストに残っていたちくわ天だ。
レジを通すと思いのほか安い。ここらへんは良心的だ。

席についてそのうどんをすする。
まず驚くのはその凡庸な味わい。こいつはどこかで味わったことがある…と思い出してみれば、小学校の頃に給食で出てきたソフト麺のてんぷらうどんのテイストをふんだんに含んでいたのだ。
もちろん給食のうどんとは麺自体の格は明らかに違うのだが、出汁や薬味、そしててんぷらとのトータルバランスがまさに給食うどん。ご丁寧なことに丼までプラスチック製だ。

だがその麺すら聖地香川にあるまじき出来だ。ただ硬いとしか表現のしようがない。周囲の透明な部分がなく、芯まで同一質のような歯ざわり。
まったくもって幻滅してしまった。
先に店内にいた関西弁のおとーさんがミニスカの娘とその弟らしきに「出汁がうまいよなぁ」とか「こっちのはちがうやろ?」としきりにアピールしているのがまた物悲しさを誘う。

店を出ると、もう時間は14時間近だった。マニアックなうどん屋はことごとく閉店する時間が刻々と近づいている。
だが既に三玉を食した我々に十分な余裕は無い。しかし悔しい。最後をこんな給食うどんで終わるなんて許されないのだ。


「もう一軒だけ行こう。このマップによればラストチャンスになる店が近辺にある。ここで駄目ならそれまでだったんだ。俺はまだ行ける!」


呼びかけに、ラストを飾るべき店に向かう。
その店の名は「三嶋」。ガイドブックには営業:不定 休日:不定と記載されている。まさに最後の賭けにふさわしい。


香川うどんの旅 怒涛編に続く



著:戦車




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