これは随分前に後輩から聞いた話だ。

岡山から近い隣県に、有名な心霊スポットがあると聞いたその後輩の友人2人が連れ立ってそこへ行ってみたそうだ。夏の夜のことである。
その場所はいろいろと噂のある自動車道らしいのだが、2人がそこへ行った時には何も起きなかった。

車を路肩に停め、あたりを見回す。
特に何かを感じるわけでもない。車に戻る。

先にドライバーが車に乗りこむ。
後から助手席に乗った彼にドライバーが緊迫した表情で言った。

「いいか、絶対に後ろを見るな。ルームミラーも見るなよ」

一瞬にして理解できた。後ろの座席に何かいるのだ。それも見るべきではない何かが。


すぐに車を発進させ、岡山へ帰る二人。
後ろを見るな、後ろを見るなと言いつづけながら車を急がせる。

だが、その二人を異常な事態が襲った。
後ろの何かが二人の肩を掴んだのだ。

叫びを上げながらも「後ろを見るな後ろを見るな」と決して後ろは振り返らずルームミラーも見ずにどうにか岡山まで帰ることが出来た。


憔悴しきった二人は、それぞれの家へ帰った。

彼らはさっきまでの体験を信じられなかった。あれは何か幻でも見たのではないか。
何も証拠があるわけではないし、危害を受けたわけでもない…。

そう思いつつシャワーを浴びようとシャツを脱ぐと、さっき何かに掴まれた肩のあたりにくっきりと手形の痣が残っていたそうだ…。



著:戦車




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