これは以前、友人Sから聞いた彼の実体験の話である。


随分前の話だ。
それはまだSがその会社に入社して間もない頃の事だった。

彼は連日の激務で疲れていた。
まだ新入社員でもあった事もあり、その心労・疲労は想像に難くない。

だがその日は特別だった。
昼食を済ませた彼は心地よい満腹感、そして日差しの暖かさに誘われるようについ机につっぷして寝てしまったのだ。



…しばらくして、彼は先輩に起こされた。もう就業時間になったのだろうか。
それにしてはその先輩、妙な表情でニヤニヤしている。

「あれ、もう時間ですか」

と、尋ねたSに先輩はこう答えたのだ。


「お前、寝言で『あぁ!まるで夢のようだ!』って言ってた!!」




…夢の中で夢を語るとは、我が友人とは言え凄い男である。



著:戦車




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