とあるスキー場でのこと。
壮大な雪山の風景を眺めながらリフトで移動中、後ろの席から若いアベックの話し声が聞こえてきた。
女「ねぇねぇ。私ぃ、大学受験で勉強してるんだけどぉ〜」
男「うんうん。」
それは大変な時期ですね。
しかし、羽を伸ばしに来た時くらいそんな野暮な話は止めま・・・
女「CO2って炭素よね?」
男「うんうん。」
まてまて、炭素は「C」だけです。
それには酸素分子の「O2」が付いているので二酸化炭素です。
女「炭酸も炭素よね?」
男「うんうん。」
まてまて、私も大した知識は無いですが、炭酸は・・・「CO2 + H2O」みたいな感じです。
だからあなたの言いたい物は、たぶん二酸化炭素です。
女「炭素なのに透明よね?」
男「うんうん。」
その時私は、リフトを降りると同時にアベックに向かって「二酸化炭素!!!」と絶叫し、そのまま滑り去りたい衝動に支配された。
しかし次の瞬間、とあるハードボイルド漫画「帽子男」での酷似したシチュエーションが脳裏をよぎる。
その漫画の概要はこうだ。
逃亡中の帽子男は、学習問題を出し合う女学生達の話す内容を耳にする。
見当違いな解答の数々に業を煮やした帽子男は、女学生達に向かって解答を絶叫し走り去るというハードボイルドなストーリーだ。
「帽子男は眠れない」か「帽子男の子守唄」のどちらかだったと思う。興味のある人は確認してみてくれ。
あいにく私は彼の様な生粋のハードボイルドではない。
なので、今回だけは「帽子男」に免じて見逃してやろう。
君が大学に合格することを心から祈っているぞ。
なに?「アベック」という言い方は古い「カップル」だろうだと?
うるさい。あいつらなんかアベックで十分だ。
著:うり
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