あれは忘れもしない暑い夏の日・・・。
イラストなどを製作していると、色々と資料が必要となる。
特に異性の衣装ともなれば専門のファッション雑誌は必須であろう。
資料となる雑誌を求めてとある書店に立ち寄った私は、女性向けファッション雑誌の中から参考になるであろう物を手に取りレジへと向かった。
何事も無く会計を済ませた次の瞬間、女性店員がおずおずと差し出した商品を見て時が止まった。
(何だこの不透明な黒いビニール袋は!?)
それは一般的な紙袋ではなく、誤解を受けても弁解を許されない暗黒の包装がなされていたのだ。
確認の為に言っておくが、私が買ったのは「With 2004 8月号」という女性向けファッション雑誌である。
別に人に見られて恥ずかしいような類の雑誌ではない。
しかし、これはどうだ?「私はエロ本を買いました」と言わんばかりの包装ではないか。
女性店員も男が女性誌を買った事に気を使ってくれたのだろうが、これはまったく逆効果である。
だが、この窮地を乗り越えなければ、おうちに帰れないのも事実。
どうする?
ここはやはり、挙動不審にならないように自然体で店から出るのがベストだろう。
落ち着け。深呼吸をしろ。ブツを受け取ったら、平然と店の出口へ向かうのだ。
決して走るな。ブツを抱き抱えるな。不審な行動は即命取りだ。
あぁ、わずか数メートルの距離の何と長いことか。
出口まで間に数々の見えない重圧に耐え、店から脱出した私を真夏の太陽が迎えてくれた。
そう、私は無実なのだ。
あれ?おかしいな・・・。
目が潤んで前がよく見えないや・・・(涙
著:うり
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