前回までのあらすじ

早起きして出発したにもかかわらず本来の目的である有名店を巡ることが一切出来ない上、さぬきうどんの常識を覆されるほどのインパクトをもつ店で完膚なきまでに叩きのめされた我々。
果たして午前中の惨敗を払拭できるか。ここがデッドライン。負けるわけにはいかない。



…時刻ははや正午を目前に控えていた。
敗北感に包まれながら午前であちこちを走り回り、途中で目にとまった看板があった。

「健康ランド」である。
健康ランドをあなどってはいけない。健康ランドを笑うものは健康ランドに泣くのである。
疲労感と徒労感に苛まれながら湯に癒しを求める我々にはもはや若さの欠片も残されていない。純然たるオヤジである。オヤジ道まっしぐら。猫大好きフリスキーである。

看板に従い道を進んでいくと、ようやく健康ランドが見えてきた。
「瀬戸大橋四国健康村」と言うのが正式な名称である。いわゆる大浴場等を備えた入浴施設であることは説明するまでもないかもしれない。
駐車場には菩薩像風な立像が建立されているが意図が読めないのも風情があってよろしい。

早速健康村に入植した我々は料金を払ってロッカーの鍵と作務衣風な浴衣を受け取り、村民の義務である入浴に向かう。
中は大きな浴槽、サウナ、塩サウナ、ジェットバス、うたせ湯、薬湯、外には白濁した湯(これは草津の湯の花を投入してあるそうだ)等があった。

特に印象的なのが薬湯であろう。
解説を読むと「八種類の漢方生薬をブレンドした中国古来の秘伝薬湯」だそうなのだが、その色と香りはインドである。
湯に浸かって目を閉じると明らかにカレーの香りがするのだ。あぁ今俺は猛烈にカレーで煮込まれているなという感触がひしひしと感じられること請け合いだ。
で、ふと浴槽横の注意書きに目をやると「体の炎症がある部分にヒリヒリと痛みを感じます。局部に痛みを感じる場合がありますので手で押さえて入ると効果的です」ってなんだとー!

既に手足をゆったりと伸ばした我々の身体を蝕む薬湯成分はあらゆるところに容赦なく浸入し、もはや手遅れ。
ぬる目の湯で洗い流してもしつこく残るヒリヒリ感(特に裏側)。ダンディな大人の男はこういう時は眉間に皺を寄せて黙って耐えるしかない。耐えることそれがハードボイルドなのだ。


眉間に皺を寄せハードボイルドにキめた我々はやや仮眠を取ることにした。
次の出発は午後3時30分と決める。行き先はついにあの三島製麺所と決定。一年ぶりのあの旨いかまたまを食うのだ。


今回はうどんの話が全然出てないが、それもまたいいのである。旅とはこういうものだ。多分。


香川うどんの旅08夏その5に続く



著:戦車




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