往来用語集

外語の日本語化 新しい言葉やことわざへの思考実験
あくまで架空世界の用語集

遊び心を忘れずに




往来用語集
 [全国版]
 [高梁版]
 [解説]



へちま [へちま]  元の名前「糸瓜/いとうり」から「とうり」に転訛。  「と」は「いろは歌」で「へ」と「ち」の間にあるので「へち間」と呼ばれるように。 木の実 [このみ]  ここ10年で「きのみ」と読まれることが多くなってきている。  「好み」が先に連想されるのは、近年「お好み焼き」が知られる様になってから。  言葉の押し出しとでも言おうか。使用頻度も高くないため発音で呼び分ける事にはならなさそう。  言葉は変化し遊ばれ、地域の言葉により「しっくり」いつしか馴染むもの。  文字や言葉に「正しい」なんてない。日本語ほど「楽しい」言葉はないだろう。

全国版

--- 住 ---

日本家屋 [にほんかおく]
 柱が多く、面積の大きな屋根の自由な造形が特徴。

時の鐘 [ときのかね]
 正午など、日に数回鐘をつき時間を報せる。役場や職能組合、火消しなどが担当。

日本服 [にほんふく]
 現代的に再設計された伝統衣装。若者の着用率が高く、年配では昭和服が多い。
 年寄りほどちゃんとした生地の服を多く持ち、不要の品は周りの者に与えられる。
 若者は古着や古生地を買うのが一般的。

小子 [をこ]
 赤子の意。赤ちゃんの語は廃れた。緑子[みどりこ]とも。

男方と女方 [おとことおんな]
 男性と女性。股の違いに依らない呼び分け。

士と匕 [つかとぱけ]
 男女の股の名。「牡と牝」から「仕と化」への転化。つかとわけ。
 男方は仕え女方は化ける[男仕女化/なんつかめかけ]。

基国 [きのくに]
 基督教圏。欧米諸国の意。

泊人 [はくじん]
 海を渡ってきた宿借り人。外国人。舶人。

支那 [しな]
 China、ちな、ちーな。日本の中国地方での呼び名。作中に支那製品は登場しない。


--- 食 ---

さぼつい [さぼつい]
 そばつゆ。語源は聞き間違いから。

納酪と酪腐 [ならくとろうふ]
 butterとcheese。「納豆と豆腐」からの並び言葉。作中にmargarineは登場しない。

酩酪 [めいらく]
 yogurt。「揺酪/桶酪/踊酪/ようらく」から「酩酪/ようらく」となり、読みが「めいらく」に落ち着く。


--- 暮 ---

実寄 [みより]
 本物に近い。

猪塚 [しづか]
 2から9まで8枚の数札を用いた二人用の札遊び。伏せた状態で数枚ずつ選び合計数で競う。

互網 [にょも]
 Internetの意。元語は互廿廿網[ごしょもう]、廿廿は庶の古字。
 さらに互如網[ごじょもう/ごにょもう]からの転化。

幕機と窓機 [まくきとまどき]
 PC機種のMac機とWin機。I、II、IIIなどroman数字と丸の中に数字記号は文字化けするので使われない。

雨畑 [あめばたけ]
 人口比の多い60代を指した語。作中の架空の書物「年金世代の傾向統計」に由来する。
 少部数が発行された直後に理由不明の回収が行われ、実際読んだものはほぼいないとされる。
 その後「粘菌の傾光」や「頭が飴菓子お花畑」と揶揄され飴畑、雨虫(あめーば)畑、雨畑と転化。

流感 [りゅうかん]
 Influenza。

偽笑ちゃん [にせふちゃん]
 紛らわしいじゃろの意。不透明な会計で蓮に似せる「似芙蓉」から「偽芙」の誤字が定着。悪人程より笑顔。


--- 諺 ---

将狙い馬子届かず [しょうねらいまごつかず]
 本当に良いものは子に届かない様。
 子向けに書かれた本や文章であっても、出版社、書店、母親と何重もの排除作用に飲み込まれる。
 結果として親好み賞取り狙いに書かれた内容の薄い本に棚が埋め尽くされ、良書はその手に届かない。
 「将を射んとすれば先ず馬を射よ」「馬子にも衣装」からの返句、並び言葉。


高梁版

高梁往来 [たかはしおうらい]
 執筆者の在所が舞台。高梁在住の執筆者では高梁往来となる。

手伝 [てご]
 おてつだい。

しゅむ [しゅむ]
 染み込む。

 [らく]
 余裕で簡単。楽じゃ、見易しぃもんじゃ。

迷うた [まようた]
 間違えたの意。うっかり感を含む柔らかい日常語。
 間違うたも稀に使われるが「ま」が殆ど発音されず「ちごうた」となる。

かってきた [かってきた]
 借りてきたの意。買うの意味では「買うてきた」となる。

はよーしねー [はよーしねー]
 早くしてねの意。県北県南とも異なる語彙。県南では「はよーせられー」となる。

こまこま [こまこま]
 蟻地獄。蟻地獄の巣に指を入れ回しながら「こまこま出てこい」を繰り返し唱える。
 自転車の補助輪を「こま」とも言い、小さめの回るものを指す言葉。

大八 [だいはち]
 乗り合い自動車。大正八年、市内に走りはじめた事からの愛称。当初の車種は四度丁型(ふぉぅどていがた)。

崗南 [こうなん]
 県南の人口の多い地域を指す造語。田と岩山ばかりの石切り場に駅が出来て以降、栄えた地。
 ここから切り出された花崗岩(かこうがん)は江戸にも多く運ばれるが、大正大震災に焼かれる。
 当地の代表的製造会社は小日和(おはよう)、河馬屋(かばや)、梶谷(かじたに)。
 町では空砲が正午を報せ、明治砲と呼ばれている。

味噌を搗く [みそをつく]
 杵で豆を潰す様から味噌を造るの意。瀬戸内周辺は石の産地なので西日本は石臼が普通。
 「団子をつくねる」も同様かと。

傘にのる [かさにのる]
 一つの傘に入る様。狐などがのりうつるからの借用表現。

手袋を履く [てぶくろをはく]
 日本の東北地方の言い回し。刀を腰に下げることを佩(は)くと言い、身に付けるの共通の語源だろうか。

堀乱衆 [しょらんしゅ]
 やんちゃな若者が集まり結成。石垣の補修、紙漉、年寄りの田畑の手伝、花火の打ち上げなど主に力仕事の互助組織。
 地元で「大人しゅう」を意味する「しょーらしゅー」を語源とし、volunteerの日本的解釈。



--- 不確定 --- 時刻法  「高梁往来」では日の出日の入りを基準とする不定時法を採用。  季節によって正午の時間は動き、夏には労働時間が長くなる。  どのみち実感も湧かない事ではあるし、有耶無耶にしておくが吉。 記載法  現在は地方言葉と造語が混在しているため、記述の検討中。  尤も、困るのは転載しようとする者だけではある。 とりあえず禁止  キューピッチ  ソウキュウ
--- 用語集の解説 --- 往来用語  「往来」作品 :plasticなし、外語なし、日本化しつつある町と人々の「世界観共有」参加型作品。  「高梁往来」 :「高梁/たかはし」在住者による作品。  「平行世界」 :劇中登場しない町は、現実と同じ世界でもある。 基本姿勢  現代の日本語に足らない言葉を地方に残る古語や新造語で補う。  地方言葉は音声言語であり、特に80代以上の年寄り言葉は音楽的で美しい。  話し言葉や転訛を尊重。書き文字や字並びも楽しむ。










「高梁往来」表紙